2009年11月07日

グリコ・森永事件

昭和最後のミステリー事件は未解決のままです。

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昭和という時代、戦前・戦後を問わず実に様々な事件が起きました。そしてそのうちのいくつかは未解決のままです。例えば偽の白バイ警官が現金輸送車を襲って多額の現金を奪取した「三億円事件」は、犯人のモンタージュ写真が全く手がかりにならず未解決です。
昭和23年に起き、青酸カリで12人もの行員を殺害して現金と小切手を奪った「帝銀事件」も、犯人こそ捕まりましたが、本人は最後まで無罪を訴え続け、その全貌は依然として謎のままです。
昭和もそろそろ終末期に入ろうとする昭和59年〜60年に、「戦後三大ミステリー事件」の棹尾を飾ることになる「グリコ・森永事件」が発生しました。

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事件の発端は、江崎勝久・江崎グリコ社長が入浴中に二人組の男に連れ去られ、誘拐されたことに始まります。その後江崎社長は自力で脱出し無事保護されました。通常の事件ならここで一段落となるところです。
ところがこの事件は、この後が大変でした。
「かい人21面相」と名乗る犯人が、「青酸を入れたグリコ製品を置く」と新聞社に脅迫状を送ってきたのです。そして実際に青酸ソーダが入っていた製品がコンビニの店頭で発見されたのです。
正体の見えない犯人に、無差別殺人を予告された社会はパニックに陥りました。そして店頭からありとあらゆるグリコ製品が撤去され、姿を消しました。グリコの株は大暴落し、会社として被った損害は50億円以上とも言われています。

犯人が次に狙ったのは、丸大食品でした。「グリコと同じ目にあいたくなかったら5千万円用意しろ」との脅迫が届き、会社側はボストンバックに要求通りの現金を詰め、受け渡し場所に持参することにします。この時持参したのは会社員に変装した私服の刑事で、不審な「キツネ目の男」を目撃し尾行しますが、取り押さえることができず逃げられてしまいます。思えばこの時が最初の「犯人逮捕のチャンス」でした。
第三のターゲットが森永製菓でした。「グリコと同じめにあいたくなければ、1億円出せ」というものでした。「どくいり きけん たべたら しぬで かい人21面相」と書かれた紙が貼られた森永製品が店頭に置かれ、グリコの時同様森永製品も店頭からまたたく間に姿を消しました。

さらに事件は続き、ハウス食品に現金一億円を要求する脅迫状が届きます。その現金受け渡し場所となった大津が所轄の滋賀県警は、この一連の事件の捜査陣の中に入っておらず、事前に何の情報も知らされていませんでした。大津サービスエリア付近では、先の丸大事件の際に目撃された「キツネ目の男」が現れ、刑事が尾行しますが再び逃げられてしまいます。受け渡し場所となった地点では、事件のことを知らない滋賀県警のパトカーが不審な白いライトバンを見つけ職務質問しようとしたところ逃走されます。
この時が最大の犯人逮捕のチャンスでしたが、またしても警察は犯人を取り逃がしてしまいます。
そして昭和60年8月、「「くいもんの 会社 いびるの もお やめや」と犯人から「終息宣言」が届き、事件は未解決のまま終了します。

以上がこの事件の概要です。

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この事件には、様々な特徴や教訓があります。まず

・大規模かつ巧妙な「劇場型犯罪」だったこと

が挙げられます。何しろこの事件、犯人は脅迫状で現金を要求しているにも関わらず、受け渡し現場では様子を伺った形跡はあるものの実際に現金を奪取していません(=少なくとも、公式には)。
その一方で、この事件を真似た模倣犯が大勢現れましたが、それらは全て逮捕されています。
多くの遺留品を残しながら、ついに逮捕されずに逃げ切った犯人はまさに警察をはじめとした社会を愚弄することに成功した、と言えます。

次に、この事件を通じて

・「食の安全」が幻想だったこと

が明らかになりました。この事件に先立つ7年前、昭和52年に「青酸コーラ事件」という無差別殺人事件がありました。これは、公衆電話に置かれていたコーラを飲んだ高校生が、中に入っていた青酸ソーダで毒殺されたという事件です。
いまどき、道端で落ちていたコーラを拾い飲みする人は滅多にいないと思いますが、70年代末期〜80年代中頃の日本人の「食の安全」に関する考え方はそのレベルのものでした。
この事件をきっかけに、グリコ製品では「開封されたことがわかるシール」等を開発し、瓶入り食品も「開封された痕跡が残る蓋」を開発しました。
グリコ・森永事件の犯人は、悪いことは間違いありませんが、「どくいり きけん」と一応警告は行っており、それに比べたら先年の天洋食品の毒入り餃子事件など、無警告で無差別殺人をやってるようなもので、より悪質とも言えます。
ともかく、この事件をきっかけにして日本人の「店頭に並ぶ食品の安全性」への関心が高まったことは間違いありません。

それにしても
「グリコを たべて はかばへ行こう」とか、「悪党人生 おもろいで」とか、数々の「名文」を残した犯人達は今頃どこで何をしてるのでしょうか。まさか、誰も本気にしないことをいいことに「グリコ事件の真相はこれだ!」みたいな暴露本を書いて印税を稼いでいる、なんてことはないと思いますが…

(本文と写真は関係ありません)

posted by シモン at 06:00| 東京 ☁| Comment(7) | TrackBack(0) | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私もジャイアントカプリコが撤去され頭に来ていました。
カプリコは当時80円で、今より大きく、シールがつき、しかもジャイアント馬場さんが宣伝していたと思います。

森永に飛び火した時もショックでした。
ガンダムチョコスナック(プラモ入り)スポーツマンクラブキャラメル(鉄道玩具入り)が買えなくなったからです。
森永は、食玩であっても美味しいかったので無念でした。

ロッテが狙われなかったので疑ったこともありますが、この事件を契機に、それまでグリコアーモンドチョコが好きだったのがロッテのアーモンドビックバーを好むようになりました。しかしビッグバーもいつの間にか姿を消してしまいましたね。

ハウスに至っては毒入りの風聞の上事故で社長が亡くなるなど踏んだり蹴ったりでした。

数ある食品メーカーの中でも、私が贔屓にしていた会社が狙われたのが悔しかったです。
Posted by デハ at 2009年11月07日 07:11
おはようございますデハ様。
ジャイアントコーンといえば、昔は外人の女の子の顔が包装に描かれてましたね。カップアイスのカップにも・・・。
まだまだ外人コンプレックスがあった時代でしたね。
Posted by ラー at 2009年11月07日 07:38
捜査網から外れていて犯人を取り逃がした所轄の滋賀県警本部長が自殺したことをきっかけに、犯人が収束宣言を出した、というように覚えています。
犯人像は、株の乱高下を操作して儲けようとした仕手グループ説とか、北の工作員説とかいろいろ言われました。
Posted by 無名X at 2009年11月07日 09:45
犯人像についてはモヤモヤとした諸説がある以上書けませんが、以降の劇場型犯罪は犯人側がマスコミを利用するだけでなく、マスコミが連日ワイドショーで芸能以外の事件を取り上げるようになったのもこの頃からです。
80年代は毒物混入防止だけでなく、防腐剤や着色料といった食品添加物に対する安全性が見直された時期でもあります。但し円高ショック以降、海外から加工食品を輸入する現代では中国製毒入り餃子事件の様なリスクも大きいです。
Posted by HB at 2009年11月07日 11:11
デハさん
朝早くからコメント有難うございます。
ジャイアント馬場さんのCM覚えてます。あの人が出ると、商品まで大きいと錯覚してしまいますね。
ハウスはあの事件直後に日航機墜落事故で社長が亡くなりましたね。

ラーさん
外国人の女の子が描かれたお菓子といえば、不二家フランスキャラメルのシャーリーテンプルちゃんが有名です。

無名Xさん
確か焼身自殺でしたね。人に(怪我とかの)危害を加えないということで、一部で義賊扱いされていた犯人グループも、あの事件で死人を出してしまったことが一連の事件にピリオドを打つきっかけだったかもしれません。

HBさん
芸能ネタより面白い報道ショーが出てきたのもあの時期でしたか。報道のワイドショー化で、さして重要な事件でなくても人目を引きやすいニュースが連日報道されたり(=矢ガモとか)するようになり今日に至っていますね。
天洋食品の事件、結局有耶無耶のまま鳩山首相の友愛・東アジア共同体に進んでいってよいのでしょうか。
Posted by シモン at 2009年11月07日 21:47
売国政策を今すぐ止めさせないとならないですね。

外人の女の子といえば、山パンのスージーちゃんも忘れてはなりません。
私のサイトの、http://nesq.schoolbus.jp/neogalage/yamapan.JPGにもあります。

http://nesq.heteml.jp/neotetsudosyo/onsenp.htm寒いので温泉に行きたくなりましたが、一緒に行ってくれる人がいません・・。

ところで「泥に・・」がここのところ毎日メンテで参っています
Posted by デハ at 2009年11月07日 22:10
デハ様、スージーちゃんと言えば昔スージー松原と名乗っていた歌手の松原みきさんって物故されてたんですね・・・。
人の命ははかない、ですので生きてるうちに精一杯やりましょう。
Posted by ラー at 2009年11月07日 22:14
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