2010年10月02日

炒カレー

カレーは煮込めば煮込むほど美味しくなる・・・と信じていました。

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私は小さい頃からの大のカレー好きで、一週間三食カレーが続いたとしても平気な体質です。若い頃、社食で1ヶ月連続で昼食にカレーを食べたことがあります。そのおかげで、インドに数ヶ月出張したときも、(インドのカレーと日本のそれは相当異なりますが)おかげさまで体調を崩さず勤務できました。

私に限らず、世の中にはカレー好きな人は大勢いると思います。
そしてその大半が、「カレーは煮込めば煮込むほど美味しくなる」と信じていることでしょう。

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ところが、数年前に出版された「感動!炒カレー いつものルウだけで。未体験のうまさ。」(水野仁輔著)という本が、私を含めた「煮込みカレー伝説」を一瞬で打ち砕いてしまいました。
著者の水野仁輔さんは、「東京カリ〜番長」として有名な方です。そんな人が提唱する「炒(チャー)カレー」とは、一体どんなカレーなのでしょうか。

一言で言ってしまえば、「具材を炒めたあと、お湯で溶いたカレー粉で10分程度煮込んで出来上がり」のカレーです。ではどうしてこの炒めて少し煮込んだだけの簡単な料理が美味しいのでしょうか。

それは、「具材が形を保っていて、歯ごたえがある」からです。従来の「煮込み派」が信奉するカレーでは、数時間にわたって煮込まれた結果、タマネギはもちろん、肉も野菜もどろどろにルーの中に溶け崩れていて、形がありませんでした。「それがルーに深みのある味わいを醸成する」と思っていましたが、実はそんなカレーよりも、炒カレーの方が遥かに具材の味を味わうことが出来るわけです。

話はだいぶ変わりますが、私の会社の仕事ぶりは、ある意味典型的な「日本企業」のやり方です。社内説明資料ひとつ作るのに、何度も何度も上長を交えたレビューを重ね、何度も文章表現やらグラフやら推敲に推敲を重ねていきます。資料が漸く仕上がる頃には、作成メンバーはまさにカレーに煮込まれた具材のごとく、すっかりエキスを資料に取られ、抜け殻の状態です。結果として出来上がった資料そのものは、誰が作ったかわからない没個性的な「典型的会社文書」として審議にかけられ、1時間の会議の後、無事にゴミとなります。

日本を仕事効率で抜いた韓国や台湾では、絶対にこのような仕事はしないでしょう。ビジネスは、時間との戦い。いかに短時間でより良い物を作り上げるか、そこに勝負をかけてきます。私の会社を始めとした日本式スタイルを「煮込みカレー」とすれば、韓国や台湾のそれは「炒カレー」にたとえられるのではないでしょうか。

私は何も、韓国や台湾のやり方が「時間を急ぐあまり思考を省略した手抜き主義」と言っているわけではありません。個性豊かなメンバーが提案する個性豊かな提案や意見を短時間で有為なビジネスにまとめ上げるには、強力なリーダーシップが必要不可欠です。
炒カレーも同じです。個性豊かな具材を単に炒めただけでは、具材がそれぞれの個性を主張しあって味が台無しになる可能性を秘めています。カレーを知りぬいた東京カリ〜番長の水野さんだからこそ美味しい炒カレーのレシピが作れるのであって、そこには相当に深い知識や経験が煮込まれているのです。

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我社の「日本風のやり方」は改まるのでしょうか。長い時間レビューを重ねる文化というのは、つまるところ「誰も責任を負わない」やり方なのかもしれません。強力なリーダーシップを発揮できる人は、大企業などにとどまらず、さっさと独立して自営することでしょう。

(本文と写真は関係ありません)
posted by シモン at 06:00| 東京 ☔| Comment(7) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、実は肉とたまねぎ以外の具材はなくてもいい派なのですが、たまねぎに関しては3段重ねで使います。
まず、細かく切って炒めます。
次に、別のたまねぎを肉と一緒にカレーと煮ます。
 最後に、追加します。
すると、ルーにたまねぎの味が溶け込み、さらにたまねぎの歯ざわりも味わえるのです。
 肉は、たいていはそのまま煮てしまいますが、やはり2段階投入すると良いようです。
 牛や豚だと、しっかりしていますが、鶏肉は煮るとほぐれて消滅してしまいますから、別途骨付きをトッピングしたりします。

なお、インド人はカレーを煮込みません。
 そのつど調合して出しています。
あるいは、ベースとなるルーらしきものを何種類か用意し、具材はあとから入れています。
 だから煮崩れた肉が入ったかれーというのは印度料理店では出されたことがありません。
ただしほうれんそう、豆などのカレーはじっくりと煮込んであります。
 肉類が煮込まれない理由のひとつに、宗教や宗派の違いにより、食べられる肉が限定されているため、どの客にも同じベースのカレーを食わせるためにとられた措置との見方もできます。
 特にイスラム教は豚のエキスだけでもご法度で、そのため彼らはラーメンが食えず、大抵のインスタント食品が食えないのです。
 インドネシアでわずかに含有された豚エキスのため暴動が起きたことは今も覚えています
Posted by デハ at 2010年10月02日 07:09
ラーメン党の私から言わせてもらえれば、
まさしくラーメンは麺のコシに美味しさがあります。
スープは十分煮込まれていた方が美味しいですね。
要するに、シャキッとした歯ごたえと、じっくり煮込んだスープの調和が美味しいという感じ。

なので、炒めただけでシャキっとした具材に、十分(メーカーで)煮込んだルーを溶かして混ぜ合わせる、というやり方のカレーは美味しいわけです。
Posted by ラー at 2010年10月02日 08:21
以前「試してガッテン」で、素人の人に自分の好きなやり方でカレーを作って食べ比べるという企画がありました。
朝から煮込み始めて、延々と長く煮込んでいた人がいましたが、スパイスの香りが飛んでしまい台無しに。わずか10分しか煮込まなかった人のカレーの方が美味しかった、と紹介されていました。
ちなみに、別のカレーの回では、素人が下手な隠し味を加えるよりも、市販のルーのままで作ったほうが美味しいということも紹介されてました。
餅は餅屋ということでしょうか。
Posted by A2Z at 2010年10月02日 11:41
カレーを煮込むのは、日本が採用したカレー料理が、ビーフシチューにカレー味を付けた英国式カレーの影響を受けた為です。デハさんの仰る通り本場印度では、煮込まず炒めた具材を混合スパイスで調味した料理が所謂カレーです。彼の地では日本の味噌汁やおかずの様な家庭料理の一環ですので、調理時間に多くを費やしません。仕込みに手間を掛けるとすれば、鶏か羊肉の入ったご馳走レベルのカレーです。
シモンさんの記事通り、韓国や台湾、最近の中国や印度の新興国企業は皆、意思決定に時間と手間を掛けないスピーディーな仕事ぶりです。日本企業の意思決定が遅い理由は、緻密な計算に基づく会議資料用データを要求するばかりか、会議に出席する上層部の顔ぶれ・顔色を窺った言い回しや事前調整に必要以上に時間と手間を掛けるからです。現場を知らない、又は前線から遠ざかった経営層が増え、また専門知識を持った経営層が少ない事も原因していると思います。そして会議の最後は延々と審議継続か、発表した担当部門に責任ごと丸投げされ、現場は日々の実務よりも○○プロジェクトの準備に追われると言う現実です。
Posted by HB at 2010年10月02日 15:50
みなさんコメントありがとうございます。

デハさん、
その「三段重ねタマネギ」は今度私も真似してみます。
インドのカレーは汁気が多いですね。日本のように煮込まないからだと思います。
以前福岡でユニバーシアードが開かれた時、イスラム教徒の人が九州ラーメンを美味しい美味しいと食べていたそうですが、宗教的には果たして。。

ラーさん
ラーメンのたとえは分かりやすいですね。麺を煮込みすぎるとのびてしまって不味いですよね。一方で、スープの方はコクですか。あっさりした醤油ラーメンも好きです。

A2Zさん
その「試してガッテン」は、私も見ました。10分で美味しく作った人は、チョコレートか何か隠し味に入れてました。煮込みすぎた人は、お疲れさんという感じですね。
あと、素人が隠し味を加えすぎると、メーカーがせっかくバランスよく調合したルーの味が崩れるというのも納得です。

HBさん
なる程、カレー味のビーフシチュー≒日本のカレーというたとえは非常に分かりやすいです。
日本の会社環境で「上の意向を窺う資料作り」というのは、何処も一緒なんでしょうかねえ。そこには、「新しいことをやる」という意思よりも、「お上の意向に従います」という恭順の意思しか表れないです。お上はお上でそういう資料を見ると「自分の意思で提案しろ!」と突き返したりしますね
そうやって延々と、プロジェクトは延びていきます。
Posted by シモン at 2010年10月02日 19:20
シモン様やHB様がご指摘された「お上の顔を窺いながら、精勤に励む」という仕事のスタイルは、江戸時代の武士にそっくりです。
江戸時代の藩という経営体は、基本的には「成長のない企業」のようなものですから、そのスタイルに先祖帰りした企業に「成長」は期待出来ないわけです。
江戸時代は鎖国していたので成長しなくてもまだ良かったのですが、今はグローバル競争の時代なので、大変なわけです。
Posted by 無名X at 2010年10月02日 19:40
無名Xさん
確かに、ご指摘の通り江戸時代の武士と現代のサラリーマンは類似点があります。日本の侍社会が、世界のスピードについていけないのもその通りだと思います。
やはり日本人は煮込みカレー作る方が好きなんでしょうねえ。
Posted by シモン at 2010年10月03日 05:28
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