2011年04月01日

サラーム・ボンベイ

1988年、インドの女流映画監督:ミーラー・ナーイルの作品です。

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世界の国で、一年間に製作される映画の数が最も多い国はどこでしょうか。
ハリウッド映画で有名なアメリカ合衆国でしょうか?映画発祥の地:フランスでしょうか?それとも、香港を有し、人口が世界で最も多い国:中国でしょうか?
答えはすべてノーで、正解はインドです。

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インドでは年間800本もの映画が製作されています。ラブロマンスあり、SFあり、ミュージカルあり。未来を舞台にした宇宙戦争のようなものでも、女性は必ずサリーを着用しているところがインドらしいです。
インド映画は日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、90年代に日本でも上映された「踊るマハラジャ」の名前を聞いたことのある人は多いと思います。貧富の差が激しく、民族によって言語も違う多民族国家インドにとって、映画はどんな階級でも楽しめる娯楽なのです。

インド映画のハリウッドをもじって「ボリウッド」と呼ばれた旧ボンベイ(現:ムンバイ)でも盛んに娯楽映画が製作されていますが、この街を舞台にした「サラーム・ボンベイ」は、娯楽映画とは一線を画す「社会派映画」でした。
あらすじを見てみましょう:

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インドの女性監督ミーラー・ナーイルが、ボンベイの路上に生きるストリート・チルドレンの実態を描いて、母国の社会問題を鋭く追求して世界に知らしめた問題作。サーカスで働いていた少年クリシュナは移民の時に取り残され、1人で大都会ボンベイへやって来た。そこで彼はインド式ミルクティー“チャイ”を売り歩く“チャイパーウ”として働き始める。彼の仲間はみな路上で寝起きするストリート・チルドレンだ。そんなある日、娼婦宿に16歳の娘が売られてきた。そして彼は、娼婦になるのをいやがる彼女を逃がそうとするのだが……。インドが抱える社会のあらゆる矛盾が存在するボンベイで、その貧しさから路上で寝起きする何十万人ものストリート・チルドレンの実態。2ヵ月に渡って綿密な調査を行った脚本や、映画に登場する子役達全員に実際のストリート・チルドレンを起用するなど、スラムの人々の生活と心を細部にまで見事に描いている。そして、それをただ単に陰惨に描くのではなく、意図的な演出を介入させない上で、そこに生きる人々のありのままを写し出す事により、彼らの姿を“乾いた映像”で見せる

===
allcinemaより引用)

ちょうどこの映画が封切られた時、私も最初のインド旅行でボンベイを訪ねていました。ボンベイはインドの大都市の中ではビクトリア・ターミナス駅とかインド門とかジョージ5世統治時代の英国風の建造物が立ち並ぶ、インドの中では比較的綺麗な町と聞いていたのですが、空港に着いて第一歩を踏みしめた途端、アスファルトから照り返す熱はすさまじく、拝火教の寺院があったりしてかなりの苦行でした。
この映画の中に登場する路上生活少年:クリシュナ君は、そんな環境でも実に逞しく生き抜いていきます。日本の社会に蔓延する鬱病だとか喪失感のようなものとは全く無縁の存在なのです。

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ナーイル監督は、インドの貧困な社会を世界に訴えようとしてこの映画を世に送り出したのですが、2011年の今の日本人の視点で見ると、日本人がとっくの昔に失ってしまったある種のエネルギーを感じ、羨ましく思えてなりません。

(本文と写真は関係ありません)
posted by シモン at 18:00| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | TVと映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ラー@水戸です。
常磐線が復活しました!上野〜水戸間ですが。
今日は秋葉原に出張してきました。
インド映画のDVDを売っていて、たまたまこの「サラーム・ボンベイ!」も手にとって見ました。1000円ちょっとだったので、買おうかと思いましたが、勿体無いと思って断念し、帰宅したらこの記事を見ました。
amazonでは結構高かったりして、アキバで買っておくんだったと後悔しています。
Posted by ラー at 2011年04月01日 18:29
印度は大都市ほど絶望的な貧富差が顕著な国です。ムンバイには行きませんでしたが、デリーはロンドン的な閑静な公園や官庁街に囲まれた幹線道路の脇に必ず浮浪者が住んでいる等、中国以上の状態でした。これが南部のチェンナイに行くとそうでもなく、普通の地方都市でした。
印度映画と言えば、ムンバイ郊外のボリウッド(印度版ハリウッド)の他、チェンナイのある南部タミルナドゥ州の映画も有名ですが、私にはどちらもサリーを着た女性が唄っているばかりで区分けが付きません。
Posted by HB at 2011年04月01日 22:31
みなさんコメントありがとうございます。

ラーさん
常磐線復旧、おめでとうございます。「スーパーひたち」とかもう走っているのでしょうか。
秋葉で買えなくても、インドDVDの通販の店だと安く買えると思います。

デハさん
ようやくガソリンの供給が軌道に乗ったようでなによりです。バスは大変そうですが・・・
文明の発祥地インドは、奥が深いです。修行に行ったまま帰ってこなくなる人も結構います。

HBさん
チェンナイ=かつてのマドラスですね。
カルカッタ→コルカタ
ボンベイ→ムンバイ
と、インド民族主義で都市の改名が行われたのが90年代半ばでしたね。
インド映画でも、女性は必ずサリーですね。昔現地で見たSFアクション映画、長いサリーを引きずって走り回るヒロインの姿がとても面白かったです。
Posted by シモン at 2011年04月02日 05:11
シモンさん
民族主義で改名された都市の中でも、ポルトガル人が命名したボンベイ→ムンバイは無理矢理感が強くしっくり来ない様です。ビクトリア駅はヒンズー英雄の名を取って今ではシヴァージー駅です。尤もあの地域のエリート層はプネーの拝火教徒出が多いです。
印度の文化はカレーと一緒で、西洋やイスラムの影響を受けても最後は印度オリジナルになりますね。

Posted by HB at 2011年04月02日 20:57
ムンバイ出身のタタ一族も拝火教徒です。かれらの葬式は鳥葬というスタイルで、「沈黙の塔」という葬儀所がムンバイにあります。
ムンバイにはアラビア海をはさんで対岸から移住してきたオイルマネーの金持ちが多いのですが、タタさんも拝火教徒ということはご先祖はインドでなくペルシャだったんでしょうね。
Posted by シモン at 2011年04月03日 05:47
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