2011年05月01日

街の電気屋さん

かつて我が家は家中何でもナショナルでした。

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♪明るい ナショナル〜 明るいナショナル〜

社名が「パナソニック」に統一されるまで、月曜日の娯楽時代劇「水戸黄門」「大岡越前」「江戸を斬る」のオープニングでは、一社でスポンサーを仕切る松下電器の歌が流れていました。

小学校の教師をしていた私の祖母の教え子の人が、近所にナショナルの電気店を開いていました。その関係で、我が家の電気製品は蛍光灯から20型カラーテレビに至るまで、すべてナショナル製品でした。
その電気屋さんのおじさんは愛想が良く、当時小学校低学年だった私が、プロペラを回して翼端灯を点滅させながら自走する戦闘機「隼」のプラモデルを製作していた頃、何故かどうしても翼端灯が光らないのを
「接触不良だね」
と言いながら直してくれたことを今でもよく覚えています。
思えば、当時の電気屋さんは「月に2〜3度やってくる、電気に詳しい人」でした。プラモデルの修理のようなことも、「業務の範囲外です」とあっさり断ることなく、風呂場の電球を取り替える合間に、面倒を見てくれました。

私が中学校に進むと、学校帰りによくその電気屋さんにお邪魔しました。それほど広くないコンパクトな店舗内に置かれたコンポーネントステレオを見に行ったからです。私の部屋に「Technics」のコンポが入ったのは、それから数ヶ月後のことでした。納入の日、最初に聴いたレコードはGeorge Harrisonの「My sweet lord」でした。ボリュームの設定が大きかったので、イキナリ聞こえてきた大音量の音楽にびっくりしました。

高校に入ると、私は電気の玩具よりも受験参考書などという味気ない本を読むことに時間を割かれるようになり、電気屋さんに足を運ぶことはついぞなくなってしまいました。その後その電気屋さんは、配達の途中でお年寄りを車ではねてしまい、ほどなくして店をたたまれたそうです。

ナショナルにしろ、東芝にしろ、日立にしろ、大手家電メーカーには必ず「会社のシンボル歌」がありました。
ナショナルは前述の
「♪みんな〜 家中〜 なーんでも ナショ〜ナ〜ル〜」ですし、
東芝は「光速エスパー」をバックに
「♪光る 光る東芝 回る 回る東芝 みんなみんな東芝 東芝のマーク」でした。
和の精神を重んじる日立の
「♪この〜木何の木 木になる木〜 見たことも〜ない木ですから」は、創業100年を経て今だに歌われています。

大手量販店が出現し、「沢山仕入れて安く売る」というビジネスモデルで市場を席巻するようになると、価格競合力のない電気屋さんは苦戦を余儀なくされます。大量消費の時代では、機械は壊れても修理になど出さずに買い換えられるのみです。電気屋さんの「アフターサービス」「きめ細かいケア」を頼りにする顧客はどんどん減っていきました。今では、かつて存在した街の電気屋さんのうち、半数以上が店を畳むか、大手量販店の下請け(設置工事など)で食っていけるかどうかという状況のようです。

先日の大震災と、それに続く福島原発の事故を境に、「安い電気製品を大量に消費する時代」は終わりを告げました。これからは太陽光パネルや計画停電対策など、環境に配慮して上手に電気と付き合っていく時代です。
そんな状況で、本当に必要なのは人と人のつながりでしょう。高齢化が進み、自分で量販店に車で買い付けに行けなくなったお年寄りは、少しの距離でも安心できる「街の電気屋さん」に御用聞きに来てもらいたいのではないでしょうか。「Google Mapで来ました」といきなり玄関に立っている見知らぬセールスマンよりも、顔見知りの電気屋さんに話を聞いてもらいたいのではないでしょうか。
そんなビジネスの領域に、電気屋さんたちだけでなく、日本社会の人間関係の再生までも期待してしまう私は、単にノスタルジーに浸っているだけなのかもしれません。
posted by シモン at 06:00| 東京 ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | 生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「灯」「涼」「暖」「音色」「色」「食」・・・「ゲーム?」
電気は人を幸せにしてくれる道具ですね、感謝!

「ナショナル」「東芝」「日立」
世界に冠たるMade in Japan〜!カッコイイわ

誰かの犠牲や未来を質にしてまでの電気は
必要ないですね。

お邪魔しました。
Posted by メンコ屋六文堂店主 at 2011年05月01日 06:26
松下は、「ナショナル」を捨てたとんでもない会社です。許せません。
日立は、ヒデ夕木さんが亡き後も「日立の木」を続けていて好感が持てます。

今回の地震で、八戸市内で日立ショップを営む友人が津波で被災し、心を痛めております。不幸中の幸いか、同市は人的被害は少なく、友人も生きてはいるのですが、早く立ち直って欲しいものです。
また、今回の震災で常磐線の「日立木」駅もなくなってしまい、これにも心を痛めています。もっとも「にったぎ」らしいのですが、私は「ひたちのき」だと信じていました。
Posted by デハ at 2011年05月01日 10:24
「計画停電の対策」というのではなく、これからの恒常的なエコ意識を持ち続けるために、太陽光発電を導入してみようかと思います。
太陽光パネルを作っているメーカーはシャープ・三洋・京セラといったところがメジャーのようで、シモン様が挙げて下さった松下・東芝・日立といった白物家電大御所はいずれも自社では生産していないようですね。
これから日本の電機メーカーの総力を挙げて、家庭用エコエネルギーを開発してほしいものです。
Posted by A2Z at 2011年05月01日 13:36
「ハクション大魔王」は、三洋電機のチェーンがCMやってました。
Posted by 無名X at 2011年05月01日 22:03
みなさんコメントありがとうございます。
返事が遅くなりました。

メンコ屋六文堂店主さん
日本の技術を結集すれば、原子力に頼らない電力開発は絶対できると思います
あとそれと、電気をダラダラ消費しないライフスタイルの確立、コレですね。

デハさん
チェーンストールの店主のご友人、一日も早く復興されることを切にお祈り申し上げます。
常磐線の復旧も。。

A2Zさん
太陽光パネルはエコのシンボルですね。
これからは太陽光や地熱エネルギー等が電力の本流となっていくことでしょう。

無名Xさん
三洋薔薇チェーンですね。ハクション大魔王のような良質アニメを良質のCMがスポンサーしていた時代でした。
Posted by シモン at 2011年05月05日 05:32
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