2012年01月15日

股引

「股引や 古き軒端の しのぶにも なほ余りある 昔なりけり」

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私が子供だった頃、祖父が「らくだのももひき」を愛用していました。駱駝、即ちキャメルの毛で織られた股引を見て、
「あれは、だいぶ年を取った人しか履かないものだ」
と漠然と思ったものです。

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実際、私が小学生だった70年代、小学生男子は冬でも半ズボンで過ごすことが奨励されたものです。長ズボン(=というか普通のズボンですが)で登校する児童は、どこか病気がちという目で見られました。
そんな小学生時代を送った私達の世代にとって、パンツ(ズボン)の下に、さらに股引を履くというのは、非常にダサいもの、という共通感覚があったと思います。

股引は、伝統的な日本の「ズボン」です。古くは室町時代に登場したそうです。脛に巻きつけて動きやすくした衣類のことを「脛巾(はばき)」と呼び、股まで覆う脛巾のことを「ももはばき」転じて「ももひき」になったそうです。

股引は、江戸時代「パッチ」とも呼ばれました。関西では今でも「パッチ」という呼び名が通用しますが、江戸時代の「パッチ」の意味は、京阪と江戸で多少異なっていました。
京阪では、素材に関係なく、足首まである丈の長いものをパッチ、膝下までのものをモモヒキと呼んでいましたが、江戸では丈に関係なく、ちりめん絹のものをパッチ、木綿のものをモモヒキと呼びました。

恋川春町の黄表紙「金々先生栄華夢」にも、主人公が「ぱっち尻はしょりに桐の柾下駄と出かけ」というスタイルで品川の遊郭に出かけていくシーンがあります。
「ぱっち」はまさしく股引のことで、「尻はしょり」というのは、着物の裾を帯に挟み込む着こなしで、塗りの下駄ではなく桐の下駄を履いている、というわけです。杉浦日向子さんは、著書「江戸へようこそ」の中で、このスタイルを「お安いアニイ風」と評しておられます。

股引に形状の似ている物に「ステテコ」があります。股引が冬場に重宝されるのに対し、ステテコは夏場に履くもので、昭和時代は縁側で団扇を片手にくつろぐ中年男性は必ずこれを履いていました。
ステテコにしろ股引にしろ、「おじさんの定番衣類」であることは間違いありません。

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私はどんなにおじさんになっても、股引を履くことなど決してないだろうと思ってました。ですが先日家族が買ってきたユニクロの「ヒートテック股引」を履き始めたところ、その暖かさに手放せなくなってしまいました。会社に履いていくスーツのズボンの下に履いていても、誰も中身を覗くわけもなく、平気です。
少し前に女性に流行した「レギンス」も、アレは詰まるところ「女性用股引」のことだったんだと確信を深めた今日この頃です。

(本文と写真は関係ありません)
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posted by シモン at 05:00| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | ファッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うちの職場でもヒートテックのすごさに感動し
「これはすごい!これはすごい!!」
と主張している方がいました。
其の方もそれまではモモヒキ扱いしていたそうですが
家族に勧められて使用したとのことです。

やはりパラダイムシフトが起こったのでしょうか。
自分も時間があったら挑戦しようかと思います。
(特にモモヒキは抵抗があるのですが…)
Posted by 国重 at 2012年01月15日 11:00
国重さん

今も股引履きながら書いてます。いや〜便利です。家ではもちろん会社にも平気で履いていけるので寒くないですよ。

あとは、子供のセンター試験の結果が心配で胃が痛いだけです・・・
Posted by シモン at 2012年01月15日 14:13
女の方がスパッツという名前の股引を愛用していますね
Posted by デハ at 2012年01月16日 20:21
デハさん

そうなんですよね

男が履くと「だっせ〜親父」
なのに
女性が履くと「おっ洒落〜」
でも3次元幾何学的には同じ物。

要するに、服飾文化というものは
実用性とか機能性とかとは無縁の世界で、
単にそれを着る対象が誰であるかという文脈の中でしか
意味を為さないということがわかりました。
Posted by シモン at 2012年01月16日 20:52
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