2012年06月08日

新聞の顔写真

最近はあまり見なくなりました。

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図書館に行くと、過去の新聞の縮刷版を見ることが出来ます。
社会面の紙面を見ていて、2012年の現代と大きく違和感を感じることは、昔の紙面には「事件当事者の顔写真が掲載されていること」です。

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85年の日航機墜落事故の紙面にも、犠牲者となった多くの人達の顔写真が掲載されていました。
事件には、被害者となる場合もあれば加害者となる場合があります。こんな時、新聞は次のように写真の掲載方法を使い分けていました。
・事件の加害者または容疑者・・・四角い枠
・事件の被害者・・・楕円形の枠
つまり、前者は硬い印象、後者は柔らかい印象というわけです。これもいつも一律というわけではなく、例えば葬儀のような厳粛な記事は、たとえ被害者でも四角い枠に納まっていました。

新聞の紙面は、昭和の過去に遡れば遡るほど扇情的な表現が書かれていました。容疑者に対しては、(まだ罪が確定していなくても)憎悪の感情をあらわにした罵りの言葉が写真(もちろん四角枠)に添えられていました。そしてその写真も、「出来るだけ凶悪な顔」を選んで掲載していたようです。

戦争の記憶が覚めやらない昭和20年代〜30年代前半にかけては、残酷な事件現場の写真も掲載されていました。例えば昭和26年に起きた電車事故では黒こげになった死体写真が掲載されていたり、翌年伊豆大島に墜落した日本航空「木星号」の墜落事故では、散乱する機体の周辺に転がる犠牲者の写真が掲載されたりしました。

時代は下り、90年代になると急速に新聞の紙面から顔写真は姿を消していきます。「犯人」という表現が「容疑者」「被告」という表現になり、まだ罪が確定していない人物の人権に配慮されるようになりました。実際、当時松本サリン事件で警察や報道機関は無関係の人物を犯人扱いしたという冤罪事件を起こしていたため、世間の批判に対してそうなったと言えるでしょう。

しかし、加害者側の顔写真が掲載されなくなった代わりに、被害者の顔写真は相変わらず掲載され続けるという期間が続きました。2012年の現代でも、どうかすると加害者は「A容疑者」のように仮名で報道されるのに、被害者の方は住所・氏名・年齢まで詳しく報道されることがよくあります。加害者の人権に配慮する一方で、被害者の人権は新聞というメディアではどうも軽視されているように思えなくもありません。

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小林弘忠さんの書いた「新聞報道と顔写真 写真のウソとマコト」(中公新書)は、このような新聞報道と顔写真の歴史や状況を詳しく解説した好著です。

(本文と写真は関係ありません)
posted by シモン at 18:00| 東京 🌁| Comment(5) | TrackBack(0) | 生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
岡本太郎ランド事故のあとの被害者バッシングほどの人権無視はなかったと思う。
Posted by デハ at 2012年06月08日 21:35
メディアは冤罪や未成年者だけでなく国籍や出身地(特に一部のアジア出身者)に対し敏感です。
Posted by HB at 2012年06月08日 22:28
デハさん

被害者の方の容姿をどうこう言うのは下品そのものですよね。
Posted by シモン at 2012年06月09日 05:21
HBさん

一方では冤罪を仕立て上げていながら糾弾するというマッチポンプですよね。
Posted by シモン at 2012年06月09日 05:23
新潟県で佐藤という男が女の子を誘拐し、10年近く監禁して逮捕されたとき、「被害者は変わり果てた姿で救出」と報道されましたが、出まわっていた学生時代の容疑者の写真は端正な美男子であったのに、逮捕時にはハゲでデブの姿に変わり果てていました。
また、パナウエーブのなんとか裕子代表も、60歳ぐらいのときの写真が使われていて、老婆の割には美人だと言われていましたが、死去したときはしみだらけの姿でした。さらに、同性愛のおなべを殺害した女性も、高校生のときホテルニュージャパンから焼け出された女性であったため、そのときの写真が使いまわされました。犯罪者は、社会と接する機会が少ないため、卒アルとかの写真や若いときの写真、結納の写真しか残っておらず、変わり果てた逮捕時の姿を正確に捉えられないのだと思います。
もしかすると、微ゑろに張られた写真が容疑者、または被害者の写真として出回ることもあるかもしれません。
Posted by デハ at 2012年06月09日 20:13
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