
60年代の「カッパブックス」のシリーズで、以前このblogでもご紹介した「歴史パズル」や、塩月弥生子著「冠婚葬祭入門」等の挿絵をごらんになったことがあるでしょうか。
当時流行した「サイケデリック」という単語を連想させる細密な描画。それらは、イラストレーターである伊坂芳太良さんの手によるものです。

伊坂芳太良さんは、1928年に横浜で生まれました。綽名は「PERO」(ペロ)といいます。60年代を風靡したサイケデリックアートをネオクラシックに仕上げながら、日本の「粋」を巧みに交錯させた和洋折衷な独特の画風を確立しました。

その活躍の舞台は多岐にわたっています。上で紹介した新書の挿絵のみならず、小学館の雑誌「ビッグコミック」の表紙や、ファッションブランド「エドワーズ」のコマーシャルデザイン、さらには子供向け童話本のイラストなども担当しています。

この画風を見て一目瞭然なように、一枚の絵を完成させるために必要とする労力は、通常のイラストレーターの何倍、何十倍にも相当します。60年代後半に彗星のように現れた彼は、たちまち人気画家となり数多くの仕事を精力的にこなしていきます。

しかし、過労がたたって1970年9月4日、クモ膜下出血で逝去します。まだ42歳の若さでした。
活躍期間が短い画家といえば江戸時代の東洲斎写楽が有名ですが、写楽にも比肩されるような短い期間での輝きでした。

軽妙洒脱、異国情緒もありながら、なおどこかに「和」の雰囲気も漂わせる「幻の絵師・伊坂芳太良」の作品を直接目に触れる機会は少ないのですが、つい先月も渋谷の「ペーターズギャラリー」で「Pero 伊坂芳太良原画展 タウンゼント館」 という展覧会が開催されました。
2012年の今も尚、その筆致は独特の異彩を放っています。
(図版は「PATER'S Shop and Gallery」より)
ひたすら、カッコいいです!
アーチストはペロさんのような生き様に憧れると思います。
まさに彼の人生そのものが「アート」でした。
私も、カッパブックスのイラストの線画で最初にペロさんを知りました。
本の文章そのものよりもイラストの方が濃密でした。
なのに昨今、人のアートが気に入らないと、悪口ばかり書き込む人がいて、どうにかしてくれって感じです。
ネットではクリエイターより批評家が偉い顔をする傾向があるようですね
まさしくその通りで、何かミステリアスで深い世界に引き込まれそうな画風でした。