2014年01月27日

藤田嗣治の戦争画

パリ画壇に名を遺した巨匠・藤田嗣治の戦争画を回顧します。

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またの名をレオナール・フジタと呼ばれた藤田嗣治は、乳白色を貴重とした日本画の技法を油彩に採り入れた日本人の画家です。
現代でも、パリ画壇にあって最も有名な日本人画家としての地位を保っています。

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そんな藤田画伯の絵に、私が最初に接したのは、「太平洋戦争」という本の中に挿入画として置かれた「南昌新飛行場焼打」という絵です。日華事変当時、中国軍の新飛行場を空襲する日本海軍の複葉攻撃機を描いた絵は、写実にして端麗、いわば「プラモデルの箱絵になってもおかしくない」美しさでした。

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しかし、太平洋戦争に突入し、戦局が悪化すると、藤田の絵は劇的な変化をします。
上は「アッツ島玉砕の図」です。海岸を背に、日米入り乱れての凄惨な肉弾戦の様子が暗い画面の中に描かれています。画面のやや右側、軍刀を揮って指揮をする小隊長と、その右側で垂直に銃剣を突き刺そうとしている兵卒が、あたかも「十字架」を描き出しているかのようです。

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同じような凄惨な光景は、「○○部隊の死闘−ニューギニア戦線」にも描き出されています。
ニューギニア戦線で玉砕した山田部隊の戦闘を描いたこの絵は、検閲のため「○○部隊」に名前を変えられていますが、その凄惨な戦いの迫力は、「アッツ島玉砕の図」となんら変わるところがありません。

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「サイパン島同胞臣節を完うす」の図です。
左側で三八式歩兵銃を構える兵士の他は、粛然と死に赴く在留邦人の非戦闘員たちばかりです。
ドラクロアに「キオス島の虐殺」という有名な絵がありますが、サイパン島の悲劇を描いたこの作品は、その精神性に於いてもドラクロアの作品を凌駕していると思えるのですが、如何でしょうか。

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昭和20年に描かれた、「薫空挺隊敵陣に強行着陸奮戦す」の図です。
画面の右側では、台湾の高砂族の兵士が義勇刀で米軍兵士の首を刎ねています。その左では日本軍の将校が、やはり敵兵を軍刀で突き刺しています。そのかっと見開いた眼光はさながら鬼神が乗り移ったかのようで、藤田はこの二人の人物を中心に、凄惨な光景を描き出しています。

これらの作品は、所謂通常の「美」としての芸術作品ではありません。しかし、この画面を通じて伝わってくる精神性の高さ、「死」を目前にした極限状態としての人間、といったテーマを正面から見据えて描いた、その勇気に今でも多くの人の心に感動を呼び起こす種類の「芸術」であることは間違いないでしょう。

戦後藤田は「戦争に協力した画家」として日本の画壇を追われパリに移住し、その地で生涯を終えます。
藤田の戦争画は、長い間米国の航空博物館が接収していましたが、近年国立近代美術館に「無期限の貸与」という形で返還され、定期的に展示されています。
posted by シモン at 05:00| 東京 ☀| Comment(25) | TrackBack(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨日とは一転、酷寒の、甲府市内の朝。
今朝は散歩を見合わせました。ゴミを集積所に出しに行くだけで辛い。車で出しに来る人が、多いのも、危険です。
今日の「ごちそうさん」近藤正臣が亡くなり、時代は昭和15年。悠太郎は課長に昇進。め以子は元気なおばさんになっていた。だが顔は若いまま。
という、回でした。

サテ、昨日の軍師官兵衛。
視聴者に向けて「俺は天下を取るぞお」といちいち説明する信長。昨日は紙に書いた「天下布武」の文字を家臣たちにバット見せるシーンが、「平成」の小渕さんみたいだった。
一方、老けた顔の奥さんと、初夜を迎えた官兵衛が、妻に話した話は、自分の初恋話。がくり。それで良いのか策士官兵衛、という、総帥さんの声がかすかに聞こえてきた思いがしました。そして最後は夫婦そろって初恋の人の墓にお参り。やはり古来、日本のデートコースは、お墓参りですナ。みなさんもお彼岸には、ご先祖の供養を欠かさないように。老人心ながら。
Posted by 百足衆 at 2014年01月27日 08:02
百足さん、ハイ!
数年後には、必ず!(。´_`)ノ
Posted by まろん at 2014年01月27日 09:56
やはり、江口信長にはちょっと違和感がありますね>官兵衛

恋愛話(恋バナ)を入れないと、女性視聴者がついてこないんでしょうねきっと。
Posted by ラー at 2014年01月27日 12:32
失敗は許されないって事でしょう。但し民放は営業の失敗ですがNHKは違うんですがね。勘違いしてるね。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月27日 13:09
万人受けするものを作ろうとすると、実は誰にも受けない・・・
というのはよくある話ですね。

iPhoneを作ったジョブスは、自分の使いたいものを作っただけなんだそうです。
自分の書きたい大河?だった「風林火山」「平清盛」は視聴率は惨敗でしたね。
Posted by A2Z at 2014年01月27日 17:05
今日の 業を 為し終えて。

サテまろんさん。もう少しの辛抱ですゾ。もし私の墓参りに来てくれなければ、化けて出ますゾ、ひゅーどろろ。

戦争画の話題をひとつ。やはり、私は「マレー沖海戦」や「パレンパン降下部隊」のような、景気のいい戦争画が好きですなあ。藤田画伯の絵は、もぞもぞ込み入っていてよくわからないです。正直な感想。

軍師官兵衛ですが、片岡鶴太郎の目の芸が細かいですなあ。「疑惑の眼差し」を、視聴者にわかりやすく、演じておられます。
Posted by 百足衆 at 2014年01月27日 17:24
鶴太郎は役は選びますが良い役者になりましたね。今回の小寺の殿様とか高時とか小悪党は良いですね。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月27日 20:18
悪党の役を上手く出来る人は芸達者ですね。
善人は、ある意味誰でも出来ます。
Posted by 無名X at 2014年01月27日 20:59
徐若宣(ビビアン・スー)は高砂族です。応援しよう
Posted by デハ at 2014年01月27日 21:39
無名X殿

悪者の心の内の悪い部分をチラッと見せるのがコツだそうです。本物の悪者はそんなもの他人には見せません。でもドラマは見せな視聴者には伝わらない。その“チラッ”と言うのがコツだそうです。で、心の内側を見せてしまう訳ですから悪役俳優てのは概ね善人が多いそうです。昔、知り合った悪役俳優に聞かされたた事有ります。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月27日 22:04
総帥さん
我々も、会社では役者をさせられてるようなものですよね。
小寺家とか見てると、身につまされますね、色々と。
Posted by シモン at 2014年01月28日 05:57
今日は、予想外に暖かい甲府市内。
午前中は、ウォーキングをしてきました。普段より、遅い投稿と、なります。
今朝の「ごりそうさん」源太に、赤紙が届く。
赤紙とは、召集令状のことです。私の兄も、この紙一枚で引っ張られて行きました。幸い、無事復員を、果たしました。

サテ、戦争画といえば、シンガポールでの山下将軍「イエスか、ノーか」も有名ですナ。
デハサンは、高砂族に詳しいとは、存じ上げませんでした、失敬失敬。
Posted by 百足衆 at 2014年01月28日 11:45
仕事の合間から。

管理人殿

まぁ全て芝居ですよwww組織(会社)に対して、上司に対して、お客さん(クライアント)に対して…迂闊に本音なんて見せれませんよ。同僚に対しては緩かったけど7〜8年前に足掬われましてね。それが悪意からならまだ許せるが本気で“正義”気取ってたからね。因みにソイツは私と関係無い所でストーカーかましてクビになりよったwwwだから私は「正義の旗」「錦の御旗」振りかざす人間て大体嫌いなんです(孤狸庵先生も生前よく言ってましたね)。で、私は職場では一部の人間除いて安易に踏み込まれないように何に付け無関心を装ってます。出世なんか諦めたから私の“安息”を守る為にね。ここでもヒールやってますけどね。時々御大や老師を挑発してるでしょwww
( ^ω^)つ厂゚タパタ
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月28日 16:01
本気で正義気取る奴ほど厄介な奴はいないぞなもし。
シモン殿も職場安全委員がどうたら言っておられたし。
Posted by 燈台森 at 2014年01月28日 16:48
今日の、業を 為し終えて。
今日は、1月にしては、暖かい日でした。

サテ総帥さん。人生、猿芝居。私の芝居は、そろそろ下げに近づいているようです。
出世などどうでもよいよい。出世しない方がずっと豊かな人生が送れますゾ。
ハテ、私を挑発されたかな?私がいつも挑発されるのは、まろんさんです。(苦笑い。)

「ごちそうさん」は、そろそろ太平洋戦争の時代に突入します。果たして、「大本営陸海軍部発表。本八日未明、」というラジオ放送は、登場しますかな?
Posted by 百足衆 at 2014年01月28日 17:31
老師

そうそう…まろんちゃんの場合は私もだなwww

燈台森殿

有ったねそんなネタ…
昔、行きつけラーメン屋のオヤジに聞いたんやけど
「『不味い』って言われるのは仕方ない。『もっと濃いのが良い』『ダシの臭いがキツイ』も良い。合う合わないもあるし俺の修行不足もある。『もう来るな』と言いたくなるのは『営業時間を〜したら、スープをこうしたら“もっと顧客の確保が出来るよ”』とコンサルタント気取りかで経営の講釈を垂れる奴だな。『アンタには関係無いだろ』」
だそうな。ソイツもそういう奴だったよ。で、上司も無条件にそれを信じてな…で、俺も真剣に噛みついたら良かったんやけど誤解生むような事したのは確かやしソイツの“善意”を信じたもんやからエラい目に会ってな…一度左遷も食らったワwwwま、ソイツは斯くのごとしだしその上司の弱みも握ってるから私を消しに掛かったブチ撒けるけどねwww
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月28日 18:59
本題やけど、確かに老師の言う通りで描き込みの多い絵ですな。漫画で言えば水木しげるさんみたいやね。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月28日 19:02
総帥様

人を信じて
人は心ひらき
傷ついて すきま風
知るだろう・・・

正義漢だと 嘆くよりも 
人を 裏切る 悪党の方がいい
人は 悪いことが 多いほど
人には 優しく できるのだから・・・

私は、隠遁生活を送りたい。
悠々自適が、私の夢なのです。
Posted by 藤原 at 2014年01月28日 19:22
藤原さん
変な詩ですね。
いつもの藤原詩を希望します。
Posted by 菅原 at 2014年01月28日 19:26
宗匠


そうやね。
「〜が会社辞めたってよ」
なんて話聞いたら
「羨ましいな」
てのが最初に浮かぶね(回りに危害加えて《特に私に》馘になった奴は「ザマァ見ろ」だけど》辞めれるアテがあるのか、辞める勇気があるのか…てもんでね。今の仕事を嫌嫌やってるって訳やないよ。巧く説明できんが…
嘗て中曽根首相が生涯学習だか設計だかのプランを出して
「ほら、此で生涯働けるだろ?」
とやった時に
「なんや死ぬまで働け言うんか?怒り(ムカッ)
て思ったくらいでねwww
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月28日 19:38
総帥様
そうです。出世よりも如何に楽しく自分の時間を過ごせるか。
それが人生の楽しみだと思います。

菅原君
ばみゅーん シャッ! シャッ!
Posted by 藤原 at 2014年01月28日 21:47
藤原さん
どみゅーんシュッシュッシュッ。

総帥さん
永井一郎さんは死ぬまで働いていました。
Posted by 菅原 at 2014年01月28日 22:55
菅原君、

反復は二回まで。

総帥様、

これ迄働いて貯めたお金で年金受給出来る歳まで自活出来そうなら、スパッと辞めたい気持ちがあります。
Posted by 藤原 at 2014年01月28日 23:02
宗匠

「働きたくないでゴザル!」とまでは言いたくないが、可能ならヤッパリ「働きたくないでゴザル!」だなwww

菅原殿

波平さんの事、見るとドラえもんが一新したのは良かったんちがうかな?誰かが死んで変わったんじゃ“代役”の臭いが残るやろ?ルパンのクリカンなんか未だにそう感じる。で、誰がやるんやろ?オヤジキャラ的にはアナゴさんの若本さんがエエねんけどな
「ぶわぁああかもぉん!宿題をまぁああだ、おわらせんとうわあぁあ!」
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2014年01月29日 00:05
総帥さん

サザエさんは時間が経過しない特異なアニメと言われてますが、声優さんの交代に時間を感じざるを得ませんね。
Posted by シモン at 2014年01月29日 05:44
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