2015年12月03日

月と六ペンス

1919年に出版されたサマセット・モームの小説です。

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日本の諺に「月とスッポン」という言葉があります。これは丸いことが共通しているものの、「似て非なるもの」を表しています。個人的には、スッポンの方が食べられるので有難いと思えなくもありませんが、月がなかったら地上に人類が平和に生息できることもない筈なので、実は月の存在の方がずっと有難いのです。

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大学の教養時代に、英語のテキストに使われていた作品が、英国の小説家サマセット・モームの「月と六ペンス」でした。月は夢を、六ペンスは現実を表すというこのタイトルの由来を聞いても自分の人生に実感できるほど人生経験を積み重ねていなかった当時の私でしたが、授業の進行とは別にその内容の面白さにどんどん引き込まれていきました。

ではあらすじを簡単にご紹介しましょう。
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英国の証券会社で働いていたストリックランドは、ある日突然妻子を残して行方をくらましてしまう。ストリックランドの妻の依頼を受けた「私」は、ストリックランドがカフェのメイドだった愛人と暮らしているというパリに向かうが、そこには愛人などおらず一人で貧しい暮らしをしながら絵を描いているストリックランドがいた。

5年後。ストリックランドの才能に惚れ込んだオランダの画家ダーク・ストルーヴは、重病に陥っていたストリックランドを家で看病しようとするが、ストルーヴの妻は猛反対した。ストルーヴの説得でストリックランドを家で看病することになったストルーヴの妻はやがてストリックランドに愛情を持ち、夫を捨ててストリックランドと一緒に家を出るが、ストリックランドに愛情を受け入れてもらえず自殺する。ストルーヴは後にそれを知ったが、ストリックランドへの敬意を忘れずオランダに帰っていく。

何年か経ち、「私」は別の用事があってタヒチを訪れていた。そこで、タヒチに暮らしていたストリックランドがハンセン氏病に感染して死んだこと、生前アタという女を妻にして息子をもうけていたこと、彼の遺作は恐ろしさの中にも神々しさをたたえた作品だったが、遺言によって燃やされて灰になってしまったこと等を聞いたのだった。

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「月と六ペンス」を読んだ方はもちろん、19世紀の美術に興味のある人なら誰でもご存知ですが、ストリックランドにはモデルがいます。タヒチで数々の素朴な裸体画を残したフランスの画家、ポール・ゴーギャンです。
無論、ゴーギャンの評伝ではありませんので実際のゴーギャンとは幾多の相違点があります。

作中、パリでストリックランドに「私」が「何故中年男が家族を捨てて絵を描かなければいけないんだ」と問い詰める場面があります。それに対してストリックランドの答えは、
「描かかなければいけないんだ。自分でも、どうしようもないんだ。水に落ちたら、泳ぎがうまかろうがまずかろうが関係ない。とにかく泳いでないと、溺れてしまう。空気を吸わないと人が生きられないように、自分は絵を描かないと死んでしまうんだ」
という意味(大意)の言葉を語る場面が最も印象的です。

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MI6のスパイだったモームが、体調を崩してサナトリウムで療養中に書いたこの小説はアメリカでベストセラーとなったため、モームは諜報部員との兼業から、専任の小説家に転進することができました。
その平易な英語の文章には、実は暗号の符牒が隠されていたかもしれません。

(本文と写真は関係ありません)
posted by シモン at 05:00| 東京 ☀| Comment(24) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「赤道を越えたサマーセットモーム」という歌が好きでした
Posted by デハ at 2015年12月03日 08:19
雨となつた、甲府市内。
今朝の「朝が来た」朝(パル演)は、はつ(宮崎あおい演)と、じっくりと話し合う。

という、回でした。
サテデハサン。サマセット・モームは、MI6に所属する、英国のスパイですナ。後にモームをモデルにした映画「007」が、作られました。
Posted by 百足衆 at 2015年12月03日 12:22
柳沢きみおの漫画に、「月とスッポン」って作品ありましたね。
Posted by ラー at 2015年12月03日 13:46
お初です。

モームを語るには、「人間の絆」を読了している必要があります。
出来れば、「お菓子とビール」もです。
無論、翻訳でなく、原書をです。
Posted by 一英文科学生 at 2015年12月03日 15:12
一英文科学生さん

はじめまして。
翻訳でも、モームを読んで感銘を受けた人ならば、その範囲内で語る資格はあると思います。

大河ドラマも、モームの原作を日本にアレンジして放映したらいいのにと思いますね。
ストリックランドは、平賀源内に置き換えればよいと思います。
Posted by シモン at 2015年12月03日 17:57
快晴ながら強風となつた、甲府市内の空。
今朝の「朝が来た」朝(パル演)と、初(宮崎あおい演)は、しばしの別れを惜しむ。

という、回でした。
サテ一英文科学生さん。貴殿の理屈では、推理小説を語るには、殺人を経験していないといけないかもしれませんゾ。
Posted by 百足衆 at 2015年12月04日 08:31
ラーメンを語るには、小麦粉と鹹水を生で食べた経験がないといけない・・・みたいな。

しかし、歴史を省略した今年の大河ドラマは、麺の入っていないラーメンみたいですね。スープは甘ったるい。
Posted by ラー at 2015年12月04日 08:44
ラー様

そもそも、ラーメン以前に食べ物にすらなってないような>花燃ゆ
Posted by ジョニー at 2015年12月04日 09:47
ラーさん
二郎では麺なしもできるそうです。もやしとにんにくと豚肉にスープがかかったもの。
Posted by デハ at 2015年12月04日 10:23
さーて、来週の「花も湯」はぁ?

美和と楫取が結ばれる!「花燃ゆ」第49回
(中略)
最終回を前に、ついに結ばれる美和と楫取。2人はどのように結ばれるのか。そして、まだ久坂への思いを断ち切れない美和を、楫取がどう受け止めるかが見どころだ。

>まだ久坂への思いを断ち切れない美和

→どこにそんな描写があった??
Posted by 燈台森 at 2015年12月04日 10:31
要するに、美和(文)は二股をかけていた
と言いたいだけの、ドラマであった。

「月と六ペンス」とは、まさに月とスッポン以上に違う世界だ。
Posted by むひょう at 2015年12月04日 12:12
女は抱かれてる時に、違う男の夢をみる…ですかwww
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2015年12月04日 12:57
総帥さん

それでは、史実の杉文さんが可哀相です。

Posted by 菅原 at 2015年12月04日 13:44
菅原君 この、
だらくそ!だらくそ!ぱげ!ぱげ!かわずやまの、ロサンゼルス銃撃犯人!

歴史上の人物だけでなく、現実に生きている皆さん方にも、敬意を払いたまえ!!

私に対しては、いい!だが、君が時折臭す、百足衆様や総帥様に対してだ!
Posted by 藤原 at 2015年12月04日 14:25
百足衆さん、総帥さん同様、藤原さんにも敬意を払います。無論デハさんにもです。

受信料は払っているのに、視聴者は恩恵にあずかれないドラマでしたね。
Posted by 菅原 at 2015年12月04日 15:00
総帥さん
藤原さんは
「食べなければいけないんだ。自分でも、どうしようもないんだ。水に落ちたら、泳ぎがうまかろうがまずかろうが関係ない。とにかく泳いでないと、溺れてしまう。空気を吸わないと人が生きられないように、自分は総帥さんから贈ってもらった国産うなぎを食べないと死んでしまうんだ」そうです。

一応、転送だけしておきます。ご参考まで。
Posted by 菅原 at 2015年12月04日 15:03
最悪な花もゆだけど再来年の井伊直虎は最悪記録を更新しそうだ、再来年になれば花もゆはまだ良かった、と振り返る日が来るのでは、と友人が言います。さてどうなるやら。いまなら間に合うから島津義弘か水野勝成か太田道灌に替えて欲しい。幕末ものなら中野竹子優子姉妹または小松帯刀を。 天智天皇もいいかも。オーディションで藤原さんを鎌足公に。
Posted by デハ at 2015年12月04日 15:10
デハさん

井伊直虎の主演女優の嫌われ具合は、現時点で予想がつきますね。

結局、時代物のドラマで女性が主人公とは言え「何上から目線で言ってるの!?」という不快感に尽きます。

実はこれは時代物に限らず、現代でも同じです。
男女「平等」は認めても、「女性優遇」はおかしいです。女性特有の情動に左右されていたら、人間の歴史はもっと悲惨なものだったことでしょう。

それを勘違いして腕まくりしてるような今年のヘロインとか再来年のヒドインとかは、演技をする以前の段階でむかつきます。
Posted by シモン at 2015年12月04日 16:14
井伊直虎は、コーエーの「信長の野望」で脚光を浴びたキャラクターですね。

どうしてそんな薄っぺらい存在を主人公に据えるのでしょうか。
それより、ちゃんとした原作のある本を書いてほしいですね。
大河ドラマにはここ数年、原作がありません。脚本家が書き下ろした作品は、「平清盛」を除いてまともな物がなかったような。

「篤姫」も、宮尾登美子さんの脚本が素晴らしかったからで、田渕久美子さんの実力は「シエ」に見るとおりです。
再来年も絶対にそうなります。
Posted by 無名X at 2015年12月04日 16:53
井上真央のドヤ顔は、はなにつきますよね(なので「はなもゆ?」)
Posted by サム at 2015年12月04日 17:48
無名Xさん


ただ、その原作もプロデューサーに審美眼みたいな物が無いとどうしようも無いよ。例えば火坂雅志やったかな?あの人は色々“佳作”は有るんよ。「全宗」とか「黒衣の宰相」とかね。ところが、その辺飛ばして採用されたのが「天地人」や。ファンに言わせるとアレはあの作者のモノの中でもアカん方やそうや。で、まあ原作以上にはならん分けで、ああなったんやね。オマケにあの作家早死に(今年の頭)したからアレが代表作みたいになってもうて、子供店長と宇宇津井利家以外は誰も得をしなかったのね。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2015年12月04日 22:29
おばんです。

まあしかし何だな。アレだけ“クソクソ”言われてた作品だがもうすぐ終わるとなると…別に何とも思わんなwww
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2015年12月05日 00:15
総帥さん、
あさって、急遽放送取り止めになっても
一件も苦情が来なそうです。
Posted by 菅原 at 2015年12月05日 00:24
打ち切りにしろって苦情が来てたぐらいなので。。
Posted by ジョニー at 2015年12月05日 01:16
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