2016年06月06日

ロレンツォ・デ・メディチ暗殺

早川書房から2009年に出版された歴史ノンフィクションです。

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「ハヤカワ・ミステリ文庫」や「ハヤカワ文庫SF」で知られる早川書房は、推理小説とSFの刊行物の老舗です。
アガサ・クリスティーシリーズや刑事コロンボのノベライズ、謎の円盤UFO等を中学時代に読んだ記憶があります。

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そんな早川書房から2009年に出版されたこの本は、マルチェロ・シモネッタによる「パッツィ家陰謀事件」の黒幕に関する新事実を描き出したものです。

「パッツィ家陰謀事件」とは、一体どんな事件でしょうか。
1478年4月26日、フィレンツェのドゥーモでミサの最中に2人のメディチ家の兄弟が襲撃されます。弟の受理あーのは即死しますが、メディチ家の当主で、事実上フィレンツェの当主でもあった兄のロレンツォは、負傷しながらも間一髪で難を逃れます。凶行に及んだのは、メディチ家のライバルだったパッツィ家でした。パッツィ家の関係者はことごとく捕らえられ、処刑されたあとフィレンツェの街を引き回され、アルノ川に捨てられました。
この時、レオナルド・ダ・ヴィンチによる、実行犯のベルナルド・バンディーニの絞首刑にされる姿のデッサンが残っています。レオナルドはこのデッサンを元に市庁舎と警察署の間の壁に壁画を描きました(現存せず)。

この事件は、直接の実行犯はパッツィ家の人々でしたが、黒幕、あるいは事前にクーデターを知っていながら黙認した人がいたとされています。それは教皇シクストゥス4世です。メディチ家の家業は銀行業です。昔から、金融を抑えた人間が権力を手にするのは変わらない構造ですが、シクストゥスは教皇庁の金融を担当していたメディチ家からパッツィ家に権利を譲渡させたのが、教皇とメディチ家の対立の発端です。シクストゥス4世の息のかかったパッツィ家のフランチェスコ・サルヴィアーティがフィレンツェの大司教になろうとしますが、ロレンツォはこれを阻止するのです。
こうしてロレンツォとシクストゥス4世、メディチ家とパッツィ家の対立が頂点に達した時にこの事件が起きたのです。

マルチェロ・シモネッタは、この頃ある有名な人物が教皇シクストゥス4世に宛てた、複数の暗号書簡を発見します。この暗号を解読すると、その人物がこの陰謀事件に積極的に関わっていたことが明らかになってきました。
その人物の名前は、フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ。横顔の肖像画がこの本の表紙になっているこの人は、15世紀最強の傭兵隊長にして屈指の芸術家パトロンであり、ルネサンス文化の立役者の一人として知られる人物なのです。
そして彼は、事件後500年の間「ロレンツォ・デ・メディチの盟友」として知られてきた人でもあります。2004年に発表されたこの「新説」は大反響を呼び、2005年のヒストリーチャンネルで放映されました。

この本では、暗号書簡の解読を行うプロセスが語られています。まず、文中に
「123423256762」
という一連の記号が頻出することに着目し、この数字のうちの「2」が母音「A」に対応するのではないかと見当をつけます(さらに、1,3,4,5,6,7を適当な子音と対応付ける)。すると
lA suA sAntitA
という文字が浮かび上がって来ます。つまり「la sua Santita」まさしく「教皇聖下」という意味のイタリア語です。
この規則を解読することで、モンテフェルトロの意図が炙り出しになった、という訳です。

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人間の歴史は、常にミステリー的な要素を包含しており、日々新たな発見やで再構築されるものです。歴史小説やドラマは、現代人に迎合して、まったくありえない創作を加えてしまうよりも、文献の痕跡を辿って新たな事実を再発見する方が遥かに面白いです。

(本文と写真は関係ありません)
posted by シモン at 05:00| 東京 ☀| Comment(18) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます。

ジュリアーノ・デ・メディチが暗殺されたパッツィ家陰謀事件、高校の時に買ったボッチチェルリの美術書の解説を読んで知りました。

2枚目の写真で、ゼッケンを体操服の胸でなく、かなり下の方につけている女子がいますね。
Posted by ラー at 2016年06月06日 05:24
シモーン ネッタ!ネッタ!
ネタニヤフ。イスラエル!

この時代の暗号は、数学理論を使った暗号方式でなかったので、

比較的解きやすいのです。
比較的解きやすいのです。

これからは、暗号詩に挑戦してみます。

へぬらっへぬらっ。
Posted by 藤原 at 2016年06月06日 06:05
曇り空となつた、甲府市内の朝。
けふの「とと姉ちゃん」一家の大黒柱となつたとと(高畑演)は、月に一度はお出かけの家訓を復活させる。

という、回でした。
サテ、パッツィ一家の陰謀事件。後ろに教皇ベネディクトスがいた事は疑われていました。

歴史は、今も躍動し、動いております。今日も郷土研究会の寄り合いに行って来ます。
Posted by 百足衆 at 2016年06月06日 08:08
真田虫…視聴率ぐんぐん下がってますショッキング
16.6%ということは、名作「花燃ゆ」の初回視聴率を、ついに下回りましたキャラクター(万歳)
Posted by 花…燃ゆバニー at 2016年06月06日 11:12
歴史、特に暗殺事件には、様々な謎がありますね。

JFKの暗殺は、オズワルトによる単独犯罪とは到底思えませんし…。

陰謀説ばかりなのもどうかと思いますが、歴史は新たな発見があってこそ楽しいですね♪
Posted by FYI at 2016年06月06日 12:13
まあ「暗殺」てハッキリ解ってる事件・事実は稚拙…若しくはもう本当に余裕の無いギリギリの状況だったって事やね。やった方としては。
ホンマに上手い方法・段取りなら気にも留められんやろね。例えば
「謀殺やけど黒幕はあの辺やな…」
と他人に擦り付けても何かの拍子で此方に向かって来る場合も有る。
私達が気にも留めてない”自然“な出来事の中にこそ完全犯罪が有る筈やね。
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2016年06月06日 12:32
司馬遼太郎の文春の短編集で「幕末」て言う幕末期の暗殺を取り上げたのが有るんやワ(「奇妙なり八郎」以外は正直あまり面白ない)。後書きで
「『暗殺』だけは嫌いだ…暗殺で時代が良い方に動いたのは『井伊大老暗殺』だけ…」
と書いてますが、実際に日本やアメリカなんかじゃテロや町中でデモおこすより立候補して天下取りした方が自分の思ってる方向に向かうの早いからね。まあ、多数が
「共感してくれる」
の前提やけどwww
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2016年06月06日 12:45
皆さん、こんばんは。お元気でらっしゃいましたか?

私の方は、里帰りをしていた飼い主・・・じゃなかった、嫁さんが明日、3週間ぶりに戻ってきます。野良ネコ生活脱出じゃあ!一昨日くらいから家の片付けやら掃除やら何かと忙しいです。

この期間、別にゴミ箱をあさって食べていたわけではありませんが、先日ここにも書きましたとうり、とうとう身体をこわして猫んでしまいました。

こんな時には、薬を飲むのですが、薬をイタリア語にすると "medicina" 、メディチーナ と発音します。何かに似ていますね。そう、今回のテーマとなっている メディチ家です。

彼らは、この事件の頃は金融関係の仕事をしていたようですが、元々は薬屋さんだったようで、紋章も丸薬をイメージしたものになっています。

えっ、皆さんご存知でした? お呼びでない?お呼びでない?こりゃまった失礼しました!
Posted by GATTO at 2016年06月06日 18:30
今思い出したけど、此は俺の思い込みかね?キリスト教的道徳では金融業てのは、あの時代ヨーロッパの名家がするのを認められてたのかね?アレは土地を所有出来ないユダヤの専業じゃなかったの?其ともその隙間を狙ってメディチ家は進出したからデカくなったんか?
Posted by 愛國赤旗党総帥 at 2016年06月06日 19:07
GATTOさん

ついに、GATTOさんのルネサンス時代も終わりを告げて、マニエリズム=マンネリの日常生活に回帰されるのですね。おめでとうございます(あ、石投げないでください)

メディチ家の紋章は、金地に5つの丸薬ですよね。最初は製薬業だったのですよね。パッツィ家がこの事件でロレンツオを暗殺しそこねて、市庁舎の屋上からパッツィ家の天下をアピールしようとしたところ、民衆からは「パッラ!パッラ!」というシュプレヒコールが巻き起こって、パッラ=玉の紋章を持つメディチ家支持をアピールしたそうです。
Posted by シモン at 2016年06月06日 19:36
総帥さん

キリスト教道徳観とは別に、メディチ家は銀行業で財を成したそうです。
というか現代でも、金融業が最強ですよね。郵政が既得権を手放したくなかったのは、飛脚ではなく、郵貯が金融業だったからであり、切手は貨幣だったからです。

ちなみに、レオナルド・ダ・ヴィンチの親父も金融業で、息子とは180度性格が合わず、お互い生涯理解することはなかったそうです。その親父は70代になっても子供を作ってます。その反動でレオナルドがモーホーになったのだと思われます。

>
>今思い出したけど、此は俺の思い込みかね?キリスト教的道徳では金融業てのは、あの時代ヨーロッパの名家がするのを認められてたのかね?アレは土地を所有出来ないユダヤの専業じゃなかったの?其ともその隙間を狙ってメディチ家は進出したからデカくなったんか?
Posted by シモン at 2016年06月06日 19:39
ロレーン ツォ!ツォ!
ローンレンジャー。キモサベ!

ロレンツォ豪華王は、フィレンツェの大黒柱、なのですなのです。

天才ロレーンツォの父は、ジローラモ、なのですなのです。
Posted by 藤原 at 2016年06月07日 06:05
曇り空となつた、甲府市内の朝。
けふの「とと姉ちゃん」勉強すると嘘をつき、待ち合わせをすっぽかした三女(演者不詳)に、とと(高畑演)は激怒する。

という、回でした。
サテGATTOさん。円満な夫婦生活復活ですナ。佳い佳い。仲良き事は、美しい。藤原さんと菅原君は、見苦しい。
Posted by 百足衆 at 2016年06月07日 08:07
メディチ家を嫌っていた教皇シクトゥス4世が、金融業をパッツィ家に任そうとしたのでこの事件になったようですな
Posted by 燈台森 at 2016年06月07日 12:17
おかしい…私が投稿すると必ず援護射撃してくれる韓流さんが来ない…顔2(おこったカオ)
さっきフルネームで書いたらエラーになった…ぷー(かわいく怒)
管理人、差別はやめてください!NG
差別やヘイトスピーチは、民度の低い人間のする事です!人権委員会に訴えますよ!!悪魔
Posted by 花…燃ゆバニー at 2016年06月07日 15:47
こんにちは。

シモンさん、百足衆先生、これから嫁さんを迎えに羽田空港に行くところです。今、バスに乗っていますよ。どうも、私はバスの中で書くことが多いようです。

妻のいない期間は、ルネッサンスどころか、19世紀の北イタリアのようなものでした。体調は崩しましたが、まあ、ペストのような恐ろしい病気でなくて幸いでした。早く飼主・・・じゃなかった、嫁さんと一緒に暮らしたいです。
Posted by GATTO at 2016年06月07日 17:06
GATTO様、
やはり奥方がいないと、体調崩しがちですよね。
小生もほぼ同じ年代なので、わかります。
重病でなく、安堵致しました。これからまた幸せな毎日を。
Posted by 無名X at 2016年06月07日 19:25
無名X様、あたたかなコメントありがとうございます。今、ちょうど空港で会えたところです。やはりうれしいです。
Posted by GATTO at 2016年06月07日 20:02
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